26.09.18
目次
日々の運用保守やユーザーサポートに追われ、「新しいIT投資や業務改善の提案をしたいけれど、日々の業務に忙殺されて時間がない」と悩む情報システム部門(情シス)担当者の方は多いのではないでしょうか。
「なぜ、IT投資の稟議は通りにくいのか?」その背景には、経営層の方と情シスの間で「ITコスト」に対する前提のズレがあります。経営層の方はITを軽視しているわけではなく、限られた経営資源をどこに配分すべきか、判断のための「客観的な根拠」を求めているのです。
本記事では、経営層の方と同じ目線に立ち、企業の成長を支えるための「ITコスト可視化の進め方」と、納得感の高い提案方法を分かりやすく解説します。
ITコスト可視化の本当の目的は、費用の削減ではありません。ITコストを「ビジネスの維持(Run)」と「変革(Change)」に分類し、現状維持のためのコストを効率化することで、企業の持続的成長に必要な「新たな投資枠(攻めのIT投資)」を捻出することにあります。
「コストや課題を可視化すると、過去の無駄を責められたり、既存の予算を削られたりするのではないか」と不安に感じる担当者の方も少なくありません。 >
しかし、可視化を行わない状態こそが、最も情シスにとってリスクの高い状態です。実態が見えないと、経営陣からは「何にいくら使っているのか分からない」と見なされ、必要なIT投資や増員までもが「無駄な出費」として一括りに拒否されてしまいます。
本来の可視化や診断の目的は、「これまで情シスがどれだけの業務を支えてきたかを可視化し、適切な評価と投資を獲得すること」にあります。自社や顧客を守り、次の提案を前進させるための「客観的なエビデンス」として活用することが重要です。
経営陣はコストに厳しい目を向けていますが、それは「出費をゼロにしたい」からではありません。企業の持続的な成長に向けて、投資対効果(ROI)を冷静に見極める責任があるからです。コスト可視化を費用の削減手段にするのではなく、業務効率化によって浮いた予算やリソースを「新しい価値を生む攻めのIT投資」にシフトするための準備として位置づけましょう。
経営層の方に提案を通すには、技術用語ではなく「経営の言葉」を使う必要があります。そこで有効なのが、ITコストを「ビジネスの維持(Run of Business)」と「ビジネスの変革(Change of Business)」に切り分ける「ITポートフォリオ」の考え方です。「維持コストを〇%削減し、それを変革のためのIT投資に〇%充てる」という対比で示すことで、経営戦略に合致した提案として伝わりやすくなります。
ITコストには、台帳に見えない「3つの隠れたコスト」が存在します。それらは、①日々のトラブル対応に消える「サイレント人件費(工数)」、②部門間で重複した「レガシーシステム維持費」、③現状維持を続けることで生じる「業務効率低下やセキュリティのリスク(機会損失)」です。
見落とされがちなのが、情シス担当者やユーザー部門が「システムのトラブル対応」や「定型的なデータ入力・二重管理」に割いている時間です。これらは帳簿上、一括して「人件費」とされるため見えにくくなっていますが、実質的な「見えない運用コスト」として大きな割合を占めています。
各部門が独自に契約したクラウドサービス(シャドーIT)や、現在はほとんど使われていない古いシステムのライセンス、遊休アカウントなども「見えないコスト」の代表例です。これらを整理するだけでも、早期のコスト見直しにつながります。
経営層の方が判断しやすいよう、「現状維持=ノーリスク」ではないことを説明する必要があります。古いシステムを使い続けることは、変化の早い現代において「業務スピードの低下」や「セキュリティインシデントの発生リスク」という、目に見えないリスク(機会損失)を抱え続けることを意味します。
ITコスト可視化の具体的な進め方は、①目的共有、②IT資産棚卸し、③業務工数計測、④ポートフォリオ分類、⑤他社比較による立ち位置把握、の5ステップです。手作業による集計やデータ収集には膨大な労力がかかるため、計画的に進める必要があります。
まずは「何のために可視化を行うのか」を明確にし、経営層の方や各部門長と共有します。目的が「削減」だけだと現場の反発を招くため、「業務効率化と新しい挑戦のため」という前向きなメッセージを発信します。
現在契約しているハードウェア、ソフトウェア、クラウドサービス、回線などの一覧を作成します。年間契約額や利用人数、担当部署を1つの台帳に集約します。
情シス部門がどのような業務に時間を使っているかを可視化します。「問い合わせ対応」「定例運用」「新規企画」などに分類し、工数を計測します。ただし、全メンバーの日々の業務を手作業で詳細に集計・記録し続けるのは、それ自体が大きな業務負荷となるため注意が必要です。
洗い出したコストと工数を、「維持(Run)」と「変革(Change)」に分類します。これらを視覚的に分かりやすいグラフやマトリクスに整理する作業には、表計算ソフトでの複雑な集計処理が求められます。
自社のポートフォリオを他社水準と比較し、「自社はどこに課題が偏っているか」の仮説を立てます。しかし、自力で客観的な業界平均データや比較基準(ベンチマーク)を集めるのは極めて困難であり、多くの担当者がここで足踏みしてしまいます。
経営層の方が判断しやすい提案のポイントは、①主語を情シスではなく「全社の生産性」にする、②投資をしない(現状維持の)場合の「リスクと損失」を数値で示す、③予算やアプローチに幅を持たせた「松竹梅の複数オプション」で提示する、の3点です。
「システムが古くて管理が大変だから新しくしたい(情シスの都合)」ではなく、「新しい統合管理ツールの導入により、全社の無駄な業務時間を年間〇〇時間削減し、本来の事業活動に注力できる環境を作る(会社全体の利益)」という、経営層の方が重視するKPIに直結する文脈で語りましょう。
新システム導入費用の妥当性を伝えるために、「導入しなかった場合、今後3年間でどれだけの維持費とトラブル対応工数(損失)が発生し続けるか」を算出します。言葉だけで説明するのではなく、視覚的なグラフや客観的数値で提示することが重要ですが、経営会議に耐えうる美しい分析レポートをゼロから作成するのは非常に時間がかかる作業でもあります。
「このシステムを導入する可否」という二者択一のアプローチではなく、予算や導入スピードに応じて「松・竹・梅」の3つの選択肢を提示します。これにより、経営層の方は「自社の現状において、どのプランが最も適しているか」という建設的な検討に入りやすくなります。
手作業によるデータ集計やグラフ化、他社比較資料の作成には多大な労力がかかります。診断ツールを活用すれば、簡単な設問に答えるだけで自社のIT課題バランスが短時間で自動レポート化され、説得力のある提案資料を効率的に作成できます。
前述までで解説した通り、自社だけでITコストや課題の棚卸しを行い、業界基準と比較して、経営層の方向けのグラフや報告資料を作成するには、膨大な時間と労力がかかります。日々の運用保守に追われる中で、こうした分析作業を一から手作業で行うのは容易ではありません。
「手作業での集計や資料作成に時間をかけられない」「客観的な比較データが手元にない」という課題を解消するショートカットとしておすすめなのが、株式会社電算システムが提供する「IT課題のバランス診断&対策レポート」です。
Web上で簡単な設問に答えるだけで、自社のIT課題の偏りやバランスが客観的に分析され、わかりやすいグラフや診断レポートとして短時間で自動生成されます。
自力で何日もかけてデータをまとめる手間を大幅に削減できるだけでなく、専門的な客観指標に基づいた診断レポートをそのまま経営会議の根拠資料として活用することで、提案の論拠と説得力をスムーズに高めることが可能です。
ITコスト可視化や課題整理を進めるにあたって、多くの情シス担当者が直面する実務上の懸念や疑問について、一問一答形式で分かりやすく回答します。
最初から全社のすべてのITコストを可視化しなければなりませんか?
いいえ、最初から完璧を目指す必要はありません。まずは最も金額が大きく、把握しやすい「基幹システムの保守契約」や「主要ソフトウェアのライセンス」から着手し、段階的に整理の範囲を広げていくのが現実的です。
診断ツール等で自社のIT課題バランスを整理した後は、どのように活用すればよいですか?
可視化されたグラフや診断レポートをそのまま「自社の現状分析」として活用し、「自社はどこに課題が偏っており、今後どの領域に優先して投資すべきか」の方向性を経営層の方へ説明する際の根拠資料としてご活用いただけます。
経営層の方に「他社よりIT予算が多い」と指摘されたらどう説明すべきですか?
単に総額を比較するのではなく、「その予算が何に使われているか」の内訳(ポートフォリオ)を示しましょう。たとえ予算が多くても、それが「ビジネスの変革(Change)」に向けた戦略的投資であれば、企業の将来にとって健全な状態であることを論理的に説明できます。
ITコストの可視化は、支出の削減ではなく、経営陣と情シスが未来の成長に向けた最適な投資配分を検討するためのステップです。客観的なデータを共通言語に、自社の次のステップを整理していきましょう。
ITコストの可視化と進め方の本質は、現状を正しく把握したうえで「限られた経営リソースをいかに有効活用するか」を経営陣と議論することにあります。
日々の業務に追われる情シス部門だからこそ、現在の維持コストやIT課題のバランスを客観的に見直し、整理することで、経営に貢献する重要なパートナーとしての役割を果たすことができます。
まずは現状を客観的に把握する第1歩として、自社の課題バランスを網羅的に整理できる診断ツールなどを活用し、説得力のある提案づくりに役立ててみてはいかがでしょうか。