2021.06.11
システム導入時に検討する項目に、サーバーや回線等の仕様やスペックを決定するサイジングがあります。オンプレミスに物理サーバを導入するケースでは、一度導入してしまうと後から容易に機器の増強などを実施することが困難な場合があり、想定されるピーク時を基準値として、ある程度の余裕を持ったサイジングが行われます。
余裕を持ったサイジングはシステム運用において、十分なパフォーマンスが得られる一方、費用対効果の観点からはロスの大きな投資であると言えます。リソースの増減を柔軟に行えるクラウドの利用が主流となった現在では、サイジングに対する考え方に変化が生まれています。クラウド上に構築しようとしているシステムに、どれ位のサーバリソースが適しているのか、今回はスペック決定に悩む方にサーバサイジングのポイントをご紹介します。
既存システムを新しいハードウェアやクラウド環境にリプレースしたり、新規に環境構築したりする際に、見積りや設計段階でサイジングを実施します。
サイジングとは、CPUやメモリ、ハードディスクの性能、また利用するネットワークの速度や帯域など、システム運用に求められる要件から項目毎に必要なスペックを決定していくことを指します。
サイジングの精度が低いとシステム運用の本番フェーズにおいて、リクエストに性能が耐えられず、十分なパフォーマンスが出ない場合があります。最悪の場合、システムダウンなどの重大な問題が生じる可能性もあるため、サイジングの役割は重要です。
既存システムのリプレースでは、平常時やピーク時の状態を実際に稼働しているサーバのリソース推移から知ることができるため、高い精度でサイジングすることが可能ですが、新規導入の場合は、過去の実績値が手元に無いため、難しいのが現実です。
一般的には、平常時とピーク時などいくつかのシステム利用状況を想定して各スペックを見積り、ユーザー数の増加や長期的なシステムの運用計画を考慮に入れながら、スペックを決めていきます。
基本的にシステムの能力は、ピーク時に対応できることを前提にサイジングする必要がありますが、物理サーバにおいてはトラブル時に求められる即効性のある対処が難しいため、大きめのスペックで見積もられる傾向が強く現れます。また、不測の事態に対応するためのバックアップ用サーバーの用意、ディスクのRAID構成によるデータの保護、ネットワークの冗長化などは、システムやサービスの安定運用には不可欠な要素です。可用性に関しても、サイジングの際に見積りする必要があります。
前述の様にオンプレミスの物理サーバ環境の場合、余裕を持ったサイジングが必要なため、過剰なスペックがしばしば問題になります。サイジングの課題を解決するには、柔軟かつ迅速にリソースの追加が可能なクラウド(仮想サーバ)の利用が効果的です。
新規システムの立ち上げ時も運用実績に合わせてスケールアップ・スケールアウトできるほか、ピーク時に増やしすぎたリソースのダウンサイジングも簡単に実行できますので、サイジングの失敗による過剰投資やアンダーサイジングによるパフォーマンスの劣化を回避することができます。
こうしたサイジングの最適化が図れる点が、物理環境との大きな違いであり、クラウドの大きなメリットと言えます。無償トライアル期間を上手く活用することで、システムの安定稼働に最適なリソースを決定し、費用対効果の観点においても最適解を導き出すことができるのではないでしょうか。